産業カウンセラー試験の受験対策を有利に進めるためには、「実技免除(実技能力評価制度)」を勝ち取ることが大きなカギです。
実技免除(実技能力評価制度)になれば、学科試験勉強に専念できるので合格への道がグッと近くなります。
それに対して、実技免除(実技能力評価制度)にならないと、当然ながら実技試験対策も行なわなければなりません。それだけでなく、実技試験受験料、受験票添付本人写真代、試験会場までの旅費交通費といった金銭的ロスも発生します。
しかも、学科試験の過去問が公開されていないのと同様、実技試験においても過去にどのような試験内容であったかは公開されていません。そのため、実技試験対策と言っても正体不明のものに対策をするということになり、これは正直、かなりの不安と苦痛が伴います。
さらにいえば、「自分は実技免除(実技能力評価制度)にならなかった…」という落胆が重くのしかかります。中には人格否定をされた気持ちになり、受験する気が起きないという方もいらっしゃいます。
なぜそうなるかといいますと、実技免除(実技能力評価制度)の基準が公開されておらず、何が原因で実技免除(実技能力評価制度)にならなかったのかがわからないからです。仮にそのような問い合わせをしても応じてくれません。そのため、「指導員との相性が悪かったのか?」「あの時にあんなことを言ってしまったからなのか?」と、あれこれ憶測したあげく、結局本当の原因がわからずに落ち込んでしまうのです。
しかし、これほど「実技免除(実技能力評価制度)」が産業カウンセラー試験の受験対策を大きく左右することを、養成講座の開始時には知らない方が意外にもたくさんいらっしゃいます。
そこで、このページにたどり着いてくださった方のために、これまでの私の指導経験から導き出された「実技免除(実技能力評価制度)を勝ち取るためのポイント」をご紹介いたします。
※以下の内容は、一般社団法人産業カウンセラー協会(以下、協会と称す)が開講している養成講座における実技免除(実技能力評価制度)について弊社が知りえた事実から帰納的推測のもと述べております。協会は免除基準に対して一切公開しておらず、この読本に記載してあることに関しても協会とは一切関係ありません。協会への問い合わせ等は固くご遠慮願います。
ポイントその1
養成試験初日から「つねに評価されている」という意識を持つ
すでに養成講座を何ヶ月も経過してからこのページにたどり着いた方は「そんなこと言われてももう遅い…」と思われるかもしれませんが、以下でご紹介しているポイントを使えば挽回できる可能性もありますので、引き続きご一読ください。
ポイントその2
協会が考える「養成講座で到達してほしいゴール」が何かを理解する
養成講座でしっかり身に付けることを求められているのは「来談者中心療法」の基本です。それはすなわち「人間の成長力を信じ、人間を尊重し、傾聴する」というもので、アドバイスすることや解決策を示すこととは距離があります。
もっと掘り下げて言えば、養成講座で学ぶものとして、カウンセリングの神様と言われるロジャーズが提唱した「クライエントが建設的に変化するための必要にして十分な6条件」というものがあります。
- カウンセラーとクライエントの間には心理的接触がある
- クライエントは自己不一致の状態にある
- カウンセラーは一致し統合されている
- カウンセラーはクライエントに対して無条件の肯定的配慮を示している
- カウンセラーはクライエントの内部的照合枠で共感的にクライエントの内的世界を感じとり、理解したことをクライエントに伝える
- カウンセラーの④と⑤の状態がクライエントに伝わっている
この6つが「来談者中心療法」の基本であり、これらを実現することが「養成講座で到達してほしいゴール」となります。
したがって、この6つを実現するために技法を習得するのだという意識を持ってください。
「それは自分が思い描いていたカウンセラー像と違う…」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、上記が「養成講座で到達してほしいゴール」である以上、私情を挟んでも実技免除(実技能力評価制度)が遠のくだけです。まずはしっかり「来談者中心療法」の基本を理解して、講座内での実技演習を進めるようにしてください。
ポイントその3
「指示」は絶対にしない
- 普段の仕事で部下がいる。
- 士業、コンサルタント系の仕事をしている。
- 世話焼きである。
- 養成講座のクラス内で年長。
- 普段から色々なことに気が付く。
- 頼られることが多い。
という方で、人の相談に乗ることが多いからちゃんとしたカウンセリングができるようになりたい。そう思って産業カウンセラーの資格取得を目指し、養成講座を受講されている方にありがちなのが「指示」をしてしまうことです。
そうした方は、つねに「助けたい」「何かアドバイスしてあげたい」という気持ちがあるため、ライブでカウンセラー役をやっているうちについつい熱中してしまい、クライエント役の困っていることに対して助けてあげたいと解決方法を指示してしまうこともあるのです。それでは来談者が中心ではなくカウンセラーが主役になってしまいます。
まして、クライエント役の困っていることがあなたにとって既に体験した悩みであったりするならば、さらに要注意です。
なぜなら、その体験から、ついついクライエント役の相手に解決策を伝えたくなり、伝えてしまいがちになるからです。
これは、来談者中心療法では受け入れがたいことである「指示的」である、ということに他なりません。つまり、悩みを解消してあげたいという親切心からクライエントにいろいろ指示してしまうことは養成講座では求められていないのです。
養成講座が求めているのは、クライエントに「変容」をもたらすこと。つまり、気づいてもらうことです。
したがって、「指示をすればするほど実技免除(実技能力評価制度)が遠のいてしまう!」と言い聞かせて、指示をしないように心がけましょう。
ポイントその4
養成講座のクラスメートと「いい意味で」仲良くなりすぎない
実際のカウンセリング業務ではほとんどのクライエントは初見なので、気心が知れた人を相手にロールプレイするということは正直「実際のカウンセリング」ではありません。そのため、ロールプレイもどこかぎこちないものになる。それを指導員がチェックしたら…やはり、実技免除(実技能力評価制度)が遠のくと考えるべきです。
また、仲が良すぎて「仲間のために動く」ことを優先し、本来の目的である「自分が産業カウンセラー試験に合格すること」が二の次になってしまう方もよく見かけます。
そうならないためには、あえてクラスメートと仲良くなりすぎないことをおすすめします。これはネガティブな印象でとらえられるかもしれませんが、実技免除(実技能力評価制度)、また試験合格のためには重要な考え方です。
ポイントその5
出された課題は毎回必ず提出し、評点「C」を取らない
その上でさらに、評点「C」を取らないことも大切です。
評点が「C」であるということは、協会が答えてほしいことを答えていない、ということです。つまり、協会が求めていることを理解していない。ということなので、これでは当然、実技免除(実技能力評価制度)は勝ち取れないでしょう。
したがって、すでに講座を受講されていて「C」を取ってしまっている場合は、実技免除(実技能力評価制度)の可能性は低いと割り切るしかありません。
では、AもしくはBを取るためにはどうすればよいか?それはこのページのその他のポイントを参考にしてください。「協会が求めていること」が何であるかが見えてくると思います。
ただし、すべてAなら確実に実技免除(実技能力評価制度)になるかというと、そういうわけでもありません。ここはすでにお伝えしているとおり「明確な基準」が示されていないので仕方のないところです。が、Cを取るよりも実技免除(実技能力評価制度)を勝ち取れる可能性がはるかに高いことは確実だと思います。
ポイントその6
技法を駆使できなくても技法を意識したカウンセリングをする
「でも、それでは実技免除(実技能力評価制度)は無理なのでは?」と思われたかもしれませんが、実は技法を使ったスムーズなカウンセリングができなくても実技免除(実技能力評価制度)に手が届く技法があります(笑)。
それが「技法を意識したカウンセリング」です。
養成講座のテキストにはさまざまな技法が記載されています。それらをしっかり覚えて、自分自身がロールプレイしている時や、オブザーバーとして参加している時に、「今はこの技法を使っている」ということをつねに意識するようにしましょう。
その意識が、のちに技法の習得につながり、実技免除(実技能力評価制度)に近づいていくことになります。
ポイントその7
「振り返り」の時に技法を織り込む
養成講座では、ロールプレイやライブでの自分のカウンセリングがどうであったかを振り返るときがあります。その時に、ポイント5で意識した、「技法名」を織り込むと、あなた自身の理解度を周囲に(特に指導員に)アピールできます。
具体的な場面も付け加えるとさらに効果的
たとえば
「CLが、職場の人間関係が悪くて困っているとおっしゃったときに、困っている様子への感情の応答はできたが、どうしても事柄を正確に把握できずに、応答しづらかった」
「お話くださった出来事への事柄への応答はできたが、そのときCLがどんなお気持ちだったか質問ができなかった」
「CLが口ごもったときに、沈黙がこわくて、ついついカウンセラーがべらべら話してしまった」
などです。
これができると、指導員は「この人は自分の行ったカウンセリングをしっかり把握している」と判断します。ある場面に対して、具体的な振り返りができる、つまり、意識を持ってカウンセリングを行っているとみなされます。これが実技免除(実技能力評価制度)に近づく大きなポイントなのです。
最初はカウンセリングするのに一生懸命で場面を覚えていられないかもしれませんが、意識し続けることでできるようになります。
自分のクセを把握して振り返る。振り返りでの「悪い点」は「改善の意志」を語る
たとえばさきほどの例の場合は
「全体を通して、沈黙をゆっくり待って、CLの感情に寄り添うことはできた点は良かったですが、いつものクセで、CLの声にあわせて、ついつい声が小さくなって、聞こえづらかった点は改善していきたいです。」
といった感じで、自分の振り返りで良い点と悪い点を把握してそれを語ります。また、悪い点についてはそれを述べるだけで終わらず、改善の意志を示すことが大切です。
ポイントその8
「セルフチェック票(チェックシート)」を有効活用する
しかし、セルフチェック票(チェックシート)は回収されることも採点されることもありません。だからあまり重要ではないと思われがちですが、それは大きな間違いです。
実技免除(実技能力評価制度)の判断基準は明文化・公表はされてはいません。その中にあって、セルフチェック票(チェックシート)に記載されている項目は、唯一、「実技免除(実技能力評価制度)となるために必要となりそうな項目が一覧となって記されたもの」なのです。
したがって、セルフチェック票(チェックシート)に記載されている項目がしっかりできるようになることは、実技免除(実技能力評価制度)を勝ち取る有効手段と言ってよいと思います。
また、そのような項目を設けているということは、指導員もそのような項目をチェックしているといえます。その点でも、実技免除(実技能力評価制度)のためにはセルフチェック票(チェックシート)を攻略することだと思います。
ポイントその9
指導員との個人面接を攻略する
ここで、「私はできていると思うのに、指導員が認めてくれない」とへそを曲げたりしてはいけません。
指導員も人間ですから、好き嫌いや相性というのもあると思います。しかし、実技免除(実技能力評価制度)への鍵を握っているのはその指導員です。
そのため、認めてくれない、と嘆くより、認めてもらうためにはどこをどうしたらよいか、という視点で個人面接に臨むほうが得策です。
さらに、個人面接で課題がわかったら、それ以降の振り返りの機会では必ず「面談でも言われて気になっている点」を含んで述べるようにしてください。
たとえば
「面談でも言われた、先走って発言してしまうことを注意して、ぐっとおさえてCLの言葉を待つように努力しました」
「わたしのクセである早口は面談でも指摘されたのですが、今日はゆっくりと話すように心がけて、できたと思います」
といった感じです。このように、指導員からの助言を心に留めて講座に臨んでいる様子を振り返りに織り込んでアピールするのです。これにより指導員は、「この人は自分自身の課題を意識して、改善して行こうとしている」と認識するのです。それが評価につながり、実技免除(実技能力評価制度)の扉を少しずつ開けていくことにつながります。
以上が私のこれまでの指導経験から来る実技免除(実技能力評価制度)ポイントです。
さらに詳しいことは、教材「産業カウンセラー 実技免除(実技能力評価制度)を目指すための読本」の中でお伝えしておりますので、ぜひ手に取ってみてください。